新築 vs リフォーム、どっちがおトク?
最近、既存の住宅を所有している人だけでなく、新規に土地と建物の取得をお考えの方から、「新築するのと中古住宅を購入してリフォームするのとでは、どっちが得なのでしょうか?」という質問をよく受けます。
費用面だけで見れば、新築よりも中古住宅リフォームの方が安く上がることが多いのですが「どっちが得か?」と決め付けて検討するのは早合点です。新築ならではのメリットや、リフォームで出来ること、さらに自分や家族の住まいとして重要視する部分などをしっかり把握した上で、「新築」「中古住宅リフォーム」を並行的に検討することが必要です。「新築」と「中古住宅リフォーム」のメリット、デメリットを比較すると、
① 価格という視点
これも当たり前の話ですが、新しい建物ほど補修箇所は少なくて済みます。でもその分、購入価格が高くなるのは言うまでもありません。ではどのくらいを中古リフォームの予算目安にしたら良いのでしょうか。中古住宅の購入価格とリフォーム工事費用の合計金額が、新築物件の取得費用の約70~80%以下になるような計画なら大成功と言えます。逆にこの目安をオーバーするのであればリフォームの計画を見直すか、新築を検討する方が良いと言われています。
② 安全性(特に耐震性)という視点
大きな地震が起きるたびに、建築基準法が改正され安全性(特に耐震性)の向上が図られています。1978年(昭和53年)の宮城県沖地震後、耐震設計法が抜本的に見直され1981年(昭和56年)に耐震設計基準が大幅に改正されました。この、新耐震設計基準による建物は、阪神大震災においても被害は少なかったといわれ、耐震性の一つの目安が、「1981年(昭和56年)以前の耐震基準の建物」や「1981年(昭和56年)以降の新耐震基準による建物」となっています。その後、皆様方の記憶に新しい1995年(平成7年)の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の教訓を活かし、その年の12月に耐震改修促進法が施行され1981年(昭和56年)以前の建物(新耐震基準以前の建物)には耐震診断が義務づけられました。少し専門的なお話をすると、地盤調査が事実上義務化になったり、耐力壁の配置にバランス計算が必要となり、構造材とその場所に応じて継手・仕口の仕様を特定により多くの耐震金物が付けられるようになりました。 以上のことから、中古住宅は築年数によって物件価格が大きく変わってきます。当然のことながら建物は新しい方が良いのですが、特に1981年以降の建築基準法「新耐震設計基準」で建てられた住まいを選ぶようにしたいものです。また古い住宅ほど構造部も傷んでいることが多いはずですから、リフォームの際には部材の補強工事だけでなく、耐震補強も忘れずに盛り込んでおけば、中古住宅とは言っても十分長く住まうことが可能になるのです。
③ 地球環境という視点
我が国の住宅(木造)は平均26、7 年の短い周期で建て替えられています。住宅の長寿命化は資源の再循環、産業廃棄物の排出抑制などの環境面だけではなく、社会的なストックの蓄積という面からも時代の流れであるといえます。また、新築するときはなるべく長持ちする家を建てる。一度建てたら直しながら使い続ける。生活にあわなくなったら、壊して建て替えるのではなく、ほかの住宅に住み替える。こうした考え方が住宅を社会的なストックにしてゆく上で必要なのではないでしょうか。
④ 残すべきものという視点
以前、舞鶴市杉山で古民家再生リフォームを行いました。この建物も、当初「新築か?リフォームか?」で迷われていました。現場調査をさせていただいたところ、足元など木材の腐朽も見られましたが、欅の大黒柱、地松の大梁など現在の建築では、手に入っても高価なものであり、なかなか使える部材でもありませんでした。勿論、プランの制約などのデメリットを差し引いても「残すべきもの」という判断をされました。現在では福知山の築42年の家を絶賛リフォーム中です。2021年新春には完成見学会の予定ですのでお楽しみにしておいてください。
以上のように「新築か?リフォームか?」を考える視点も沢山あります。そこで、私は、迷われたら「新築」「リフォーム」両方のプランを計画し、検討していただくようにしています。リフォームにしろ、新築にしろ一生一度の自分たちの大切な住まいづくりです。「ちょっと一緒に頑張って頭に汗かきましょう!」なんてね!